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4/22/2011

. haiku about dolls .

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Haiku about Dolls

. Haiku, Kigo and Dolls . INFO .


I hope to translate some of the following on the way !

source : HAIKUreikuDB

人形 ningyoo
あきかぜや人形とてなき目鼻立 久保田万太郎 流寓抄
おたべ人形こくりこくりと冬ぬくし 小宅光子 『雲に風に』
かげろうや十指が生きて人形師 桜井絹子
かすみ草紙人形も二重帯 花谷和子
がくがくと浄瑠璃人形涕けり雪 細川加賀 生身魂
きさらぎや人形にある糸切歯 藺草慶子
きめこみの小さき人形や小松曳 四明句集 中川四明
ころげ出てのろま人形麦湯かな 神蔵 器

さくら散る幕引つとむ人形に 伊藤いと子
しぐるるや津和野人形の紙小袖 山田弘子 螢川
しぐれひとしきり人形つつむ玻璃 中田剛 珠樹
しづかにも武者人形の髪そよぐ 岸本尚毅 舜
そぞろ寒金掘る人形またたかず 吉田銀葉
そのうちに紅絹の這ふ児や人形会 牧 鴻月
たつきの机の首ふり人形首ふつて今年も暮るるか 人間を彫る 大橋裸木
ちゝろ鳴きマネキン人形それの子伴れ 中村草田男
つつきては浮人形の気を覚ます 久保きよじ(蜻蛉)
てのひらに梅雨の重みの農人形 影島智子
どうしても浮いてくるなり浮人形 藤田あけ烏 赤松
どんたくを人形店に避けて見る 下村梅子

noroma ningyoo
のろま人形それぞれの影秋灯下 石田章子 『雪舞』
のろま人形首ぐらと梅雨どしゃぶりに 諸角せつ子

はばからず人形作り松の内 石田あき子 見舞籠
ふかぶかと人形凭れ合うて梅雨 渋谷道
ふくよかな足ふんばつて武者人形 檜紀代
ふぶかれて厄人形の泣き黒子 佐々木とく子 『土恋』
ふみならし人形づかひや駒むかヘ 井原西鶴
ほとなしの眠人形ねむらする 三橋敏雄 *シャコ
ぼろ市の風があやつる指人形 有馬籌子
ゆうやみの公園人形が墜落す 蛯原喜荘
われに似し浮人形の夕ごころ 大野梢子
オルゴール切れて人形悴みぬ 吉原文音
シヨウウィンドウに反る人形や晩夏光 小谷伸子
ジジジジジブリキ人形歩む春 山崎尚美
セルロイド人形歩け春の宵 大峯あきら
ニポポ人形抱かせてもらふ雪の夜 影島智子
フランス人形みな美しき核の風 大井恒行
メーデーの人形一座通り過ぐ 斉藤夏風
七生の人形のとき寒いとき 池田澄子 たましいの話
三寒四温人形きらきら押せば泣く 的場秀恭

kushi ningyoo head dolls on a stick
串人形よよと泣かせて黴畳 佐野美智
串人形果てて散り敷く夕ざくら 高橋六一

乙女子や先づ人形を更衣 蘇山人俳句集 羅蘇山人
二日はや鑿研ぐ阿波の人形師 溝渕匠史
五月人形殺という文字見ぬ日なし 田川飛旅子 花文字
五月人形見せて貰ひてすぐに発つ 鈴鹿野風呂 浜木綿
人中に人形の顔や宵まつり 百合山羽公

人形がかざしてゆるる笠の菊 水原秋桜子
人形がこなす苦役に悴めり 渡辺恭子
人形が横向いている稲光 松岡弘子
人形が見つめるゼロの自乗かな 村井和一
人形が銜へて落す花すすき 福田甲子雄
人形となりてあやめの中に居り 女池八重子
人形となる竹積めり牡丹雪 ほんだゆき
人形と共に転びて日短 千原 叡子

人形にした告白がアマリリス 稲用飛燕
人形にちよんと寒紅さしにけり 有馬朗人
人形にゆびきりの指はなし雨月 鳥居真里子
人形に仕立おろしの如き菊 後藤比奈夫
人形に倣ふといへど鉾の稚子 後藤夜半 翠黛
人形に初東雲の色の髪 鈴木伸一
人形に国籍ありやクリスマス 岩崎照子
人形に愛憎すこし冬籠 後藤夜半(1895-1976)
人形に月のさしゐる晩夏かな 宮武寒々 朱卓
人形に生死の無くて旱星 永井純子
人形に粘膜がある春の闇 前川剛
人形に茶をはこばせて門すゞみ 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
人形に言葉をかけて夜長かな 竹山美江子
人形に頭がのりて霜の晴 綾部仁喜 寒木
人形に魂を入れをり秋の人 長谷川かな女 雨 月
人形に齢加はる弥生かな 金丸 保

人形ねぶた大揺れ小揺れ夜の雲 吉田鴻司
人形のさめざめと泣く近松忌 古市絵未
人形のすつぽんぽんに狩の音 吉本伊智朗
人形のぜんまいが切れ雪となる 小泉八重子
人形のだらりと抱かる雲の峰 保坂敏子「芽山椒」
人形のだれにも抱かれ草の花 大木あまり(1941-)
人形のできあがる日の冬の川 飯島晴子
人形のならぶ小店や菊の花 菊 正岡子規
人形のほほと笑へり桜の夜 伊藤トキノ
人形のまなこが殖ゆる深雪里 源鬼彦
人形のやうに坐りて冬座敷 柿本多映
人形のような曽孫や風薫る 山田光子
人形のように生かされ玉霰 伊達甲女
人形の下地かわくや畑の梅 斯波園女
人形の世界と別にゐて菊師 山下美典
人形の供養に揺るる糸ざくら 石川英子
人形の双つづつあり雛の意か 後藤夜半 底紅
人形の吊られて春の日のさかり 鴇田智哉
人形の女正月草の庵 後藤夜半 底紅
人形の妊りやすき梅雨の闇 平井照敏 天上大風
人形の家にも鍋・釜初しぐれ 鍵和田[ゆう]子 浮標
人形の家を出ずると日雷 徳弘純 麦のほとり 以後
人形の宿禰(すくね)はいづこ祭舟 後藤夜半
人形の寝乱れてゐる春の闇 吉田汀史
人形の川にはりつき凍りけり 中田勘一 『雪礫』
人形の影触れてゐる罌粟の花 上野澄江
人形の手に正札や銀狐 星野立子
人形の抱かれやつれや青葉風 池田澄子 たましいの話
人形の掌に溢れさすゆすらうめ 古市絵未
人形の撓わぬ手足初神楽 中村天詩
人形の春服人の前に立つ 阿波野青畝
人形の櫛するどくて夏の雨 渋谷道
人形の気配なき家桃の花 三浦澄子
人形の浮く人日の舟溜 松原雅子
人形の浴衣の女憎からず 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
人形の独りと動く日永かな 夏目漱石 明治三十七年

人形の目の逸れてをる破魔矢かな 上野泰 佐介
人形の目の黒々と夜長星 島田仙海
人形の目玉拭ひて夏至の夜は 瀧澤和治「看花」
人形の眼玉の向きも淑気かな 岡田史乃

人形の笑ふ仕草や泣く遅日 長谷川かな女 花寂び
人形の笠にきせたる椿哉 寺田寅彦
人形の細き眉ひく一葉忌 笹井武志
人形の肉が落ちゆく十三夜 田邊香代子
人形の肌の縮緬さくら冷え 八染藍子
人形の肩よく泣けり白桔梗 斎藤梅子
人形の胸が破れて蟻の列 対馬康子
人形の胸にさし込む菊師の手 梶山千鶴子
人形の胸押せば哭く春の宵 伊藤敬子
人形の脱ぎし菊とてうつろ咲き 今瀬剛一
人形の菊こそ花の乞食かな 尾崎紅葉
人形の街の献血駅うらら 鈴木貴水
人形の裂をひろげて避暑の雨 大山雅由
人形の裏側にある菊師の目 石神秋羅
人形の襟より菊を著せはじむ 佐賀白梅
人形の足の扁平秋出水 小堀紀子
人形の足地に触れず寒の雷 澁谷道
人形の鉾にゆらめくいさみ哉 祗園会 正岡子規
人形の陰のみ太る夜の秋 攝津幸彦 鹿々集
人形の頭に永き日がつまる 仁平勝 東京物語
人形の顔てらてらと雪催 阿部みどり女
人形の顔のうつむく一葉かな 田中裕明 花間一壺
人形の餅搗きてんやわんやかな 細見綾子 天然の風
人形の首を干しけり風光る 九品太

人形の髪にさしたる菫哉 寺田寅彦
人形の髪の伸びしよ光悦忌 宮坂静生 春の鹿
人形の髪の重たき十六夜 後藤房枝 『蕗童子』
人形の髪むらさきや暑気中り 山口広子
人形の髪朧より掴み出す 桂 信子
人形の髪梳り冬籠 後藤夜半 底紅

人形はお梶菖蒲は二番咲き 阿部みどり女
人形はみな立てり露来つつあり 原田喬
人形は振りかえらない青山河 下山光子
人形は薄着してゐる秋の風 廣江八重櫻
人形は軽く口開け梅雨寒し 対馬康子 吾亦紅

人形まだ生きて動かず傀儡師 高浜虚子
人形も仮面も秋思ベニスの夜 山本圭子
人形も疎開して来ぬ里おぼろ(文楽) 廣江八重櫻
人形も茶話の一人や春炬燵 石川 幸
人形も足投出して女正月 角山徳人
人形も馬もうごかぬ長閑さよ 夏目漱石 大正二年
人形や玩具や冴えてゆく齢 市原光子

人形をあやす児の影春障子 安野良子 『篝火草』
人形をきざむ小店や菊の花 菊 正岡子規
人形をみな裸にす暖炉の前 田川飛旅子 『薄荷』
人形を叱る子供や花の雨 岡田史乃
人形を子として抱く壬生狂言 古屋秀雉
人形を寝せて白眼や秋の谷 宮坂静生 春の鹿
人形を射つ流燈の町の辻 田川飛旅子 『山法師』
人形を悪事に誘ふ日向水 栗林千津
人形を抱き紋十郎風邪ごゑ 石原八束 秋風琴
人形を木目込む指や冬ぬくし 花野井玉兎
人形を納め帰りて雪白し 中田勘一 『雪礫』
人形を遣ひ了りて春田打つ 杉村凡栽

人形使お七に添いて深雪踏む 藍不二子
人形供養固く目隠し雛の顔 小島良子
人形供養末期の水も貰はずに 菖蒲あや
人形劇豚が主役よ子供の日 八牧美喜子
人形塚なんじやもんじやも裸木に 倉橋羊村
人形塚落花の中に支へあふ 夏目千佳
人形師のうつら~や蝶のとぶ 高田蝶衣
人形浮き冬の軍港とぞ思ふ 秋元不死男
人形焼きの目鼻さがしてあたたかし 渡辺真帆
人形焼のぬくもり胸に初観音 中山桂子
人形焼売れる納めの水天宮 宮崎良徳
人形焼律儀にあひ肖て近松忌 平井さち子 紅き栞
人形産む朝顔夕顔あるところ 阿部完市 にもつは絵馬
人形芝居の首切られ飛ぶ午まつり 北野民夫
人形館に鳴る風車人をさす 石原八束 空の渚

今白昼天にいる人形あそべ 阿部完市 春日朝歌
佐渡恋の竹人形や春を待つ 古島恒子
傘雨忌や人形焼をきむら屋で 小林しげと
八十八夜茶汲人形も襷せよ 高橋睦郎 金澤百句
八月よバービー人形は裸のままだ 天野素子
兵古帯のアナーキストや浮人形 安田循子(玄鳥)
内裏雛人形天皇の御宇とかや 松尾芭蕉
冬晴や和紙人形の毳はつか 山本源
冬牡丹人形箱を出でゝ見よ 長谷川かな女 雨 月
冬麗の谷人形を打ち合はせ 飯島晴子
冷房や魂抜けて木隅人形 関森勝夫
凍てし階人形つかひ登り来る 宮武寒々 朱卓
出陣の稚き眉目武者人形 橋本多佳子「多佳子句集」
刃物研ぐ竹人形師雪の香に 田中英子 『浪花津』

初凪の島に人形の首刺さん 星野紗一
初売や博多のものの帯人形 大場白水郎
初彫の樟の香高く人形師 大島民郎
初稽古人形の目のふと赤し 西村和子 かりそめならず
初観音人形焼を買ふ列に 瀧春一
初買や博多のものゝ帯人形 白水郎

別天の人形生きてクリスマス スコット沼蘋女
助けたるごとく浮人形抱く 茨木和生 往馬
博多人形の函を機上に富士初雪 田川飛旅子
博多人形裸になれず朧月 大石雄鬼

厄人形に口説やさしき雪降り出す 昆ふさ子 『冬桜』
厄人形両手上げても雪詮なし 太田土男
厄人形作る爺さまの水つ洟 宮崎とき女 『雪椿』
厄人形雪に吊して村の界 佐々木とく子 『土恋』
厄人形雪野へ送る肩車 佐々木とく子 『土恋』

吊されて竹人形の夏やつれ 辰野利彦
名作の鏡獅子人形去年今年 阿部みどり女 月下美人
咳こぼれ人形つかひ女人なり 山岸 治子
喉仏無き人形の供養かな 中嶋秀子
地平線に種を蒔くすぐ人形生える 山田緑光
埋火や子なき夫婦の人形棚 永井龍男
夏の果人形海へ流れ出て 川崎展宏
夏の河片手の人形流れゆく 松田准一
夏の雲湧き人形の唇ひと粒 飯田龍太「麓の人」
夏痩や博多人形二重あご 佐藤照美
夏終る人形の浮く船溜り 伊藤トキノ
夏蟲や蚊遣粉にする人形屑 富田木歩
夏館フランス人形窓に見ゆ 高濱年尾 年尾句集
外巻きの人形の髪七変化 甲州千草
夢の中浮人形となりにけり 星野立子
大寒や膠を溶かす人形師 木村里風子
大寒や裸の人形踏んでいる 天野素子
大空は虚しと眺む浮人形 如月真菜
天帝のあやつり人形雪卸 笹次和子
姉様人形壺のつるもどきが慕ふ 磯貝碧蹄館
嬰去りてしばし腑抜けの浮人形 広上あい
子が沈め母がしづめて浮人形 成田清子「春家族」
子の部屋に人形が鳴き雪が降る 千代田葛彦 旅人木
子供ゐて人形寺の冬日かな 細川加賀 生身魂
室の花黒んぼ人形笑ひけり 仙田洋子 橋のあなたに
宵瓜の狂をさざめけり人形は 臼田亞浪 定本亜浪句集
寒椿日ぎめの人形仕上らず 木歩句集 富田木歩
寒牡丹淋し人形に愁なし 福田蓼汀 山火
寒紅を刷いて人形仕上りぬ 矢島房利
寒雷の色を知りたい人形師 加藤ミチル
射的屋の人形倒る夜の雪 鈴木真砂女 夕螢
小春日の川をあやつる人形師 対馬康子 純情
小春日や人形焼に鳩と塔 中戸川朝人 尋声
屋根越しに山車の人形や桐の花 月舟俳句集 原月舟

山の湯の花に来るなり人形座 穐好樹菟男
山吹や人形かわく一むしろ 山吹 正岡子規
山梔子や合壁に人形師仏壇師 福田蓼汀 秋風挽歌
山笠の たそがれが 人形のひとみからくる 吉岡禅寺洞
山笠人形眦の向きみな違ふ 鮫島春潮子

Saga ningyoo
嵯峨人形並べ竹秋となりにけり 萩原麦草 麦嵐

市電すでに日盛りの音人形店 川端青踏
帚木や一人逝きたる人形師 大串章
帯の菊つくろひこぼす人形師 大橋櫻坡子 雨月
幕開けて御慶を申す人形かな 川田十雨
年玉や貝に納めし豆人形 島道素石
幻化の呼吸 整う 月下の人形師 伊丹公子 ガルーダ
底冷の竹人形の展示室 高木晴子
後の月湯槽に倚れる人形師 宮武寒々 朱卓
御所人形の稚児輪ふくらむ牡丹の芽 長谷川かな女 花寂び
意識に流れなぞない舌人形のUたーん 加藤郁乎
戻るなり漁夫が浮人形つかむ 吉本伊智朗
手を垂れて人形のゐる年の果 奥坂まや
手袋の指人形で遊びし日 杉山良子
押せば哭く人形の記憶春の枯野 寺井谷子
捨てられし人形浮かぶ冬の海 足立悦子
捨てられた人形がみせたからくり 住宅顕信 未完成
捨て人形風花に眼をひらきゐる 能村登四郎
掃初の金襴屑や人形師 杉森干柿
揚羽来て人形の髪植ゑたがる 柴田朱美
揺籃や遅日の窓のつり人形 河野静雲 閻魔
放ち鶏浮き人形の水を飲む 江口柳太
放心のかたちに置かれ浮人形 小泉八重子
敵役どつと討たれし秋の風(文弥人形) 岸田稚魚 『雪涅槃』
文弥人形短夜の風は湖より 林原耒井 蜩
文弥人形見飽かぬ春の別れかな 飯野 計夫
文楽の人形の手の泣く障子 文挾夫佐恵
新涼の髷透き彫りに竹人形 長谷川かな女 花寂び

日を透す玻璃に人形師走影 阿部みどり女 月下美人
日影さす人形店や小六月 小六月 正岡子規
日暦に明日あるなり浮人形 木内彰志

旧盆や魔羅突ッ立てて藁人形 石川桂郎 高蘆
星まつり歳月人形にも重ね 多田美栄子
星合や木の人形の泪して 殿村菟絲子 『晩緑』

春の墓人形昏れて子は見えず 飯田惇子
春の夜の文楽人形泣き崩れ 秋山未踏
春は春の言葉を刻み竹人形 殿村菟絲子 『菟絲』
春寒く咳入る人形遣いかな 渡辺水巴
春寒く咳入る人形遣かな 渡邊水巴
春寒く咳入る人形遣ひかな 水巴句帖 渡邊水巴
春愁や竹人形の胸たひら 日阪昌子
春日傘たたみて人形寺へ入る 今村ふき枝
春眠の児に人形も眠りをり 後藤二木
春遠し眠り人形子とねむり 成瀬櫻桃子 風色
春陰や竹人形の指四本 田口風子

時計から人形が出て降誕祭 館容子
時雨ひとしきり人形つつむ玻璃 中田剛 珠樹以後
暖かや人形の肩埋む髪 大熊輝一 土の香
月がのぞく人形に名のなかりけり 川口重美
木偶人形吊らる深秋楽屋裏 谷中隆子
木屑散る人形作り夜の長し 平野信子
木箱より人形のかほ神無月 藺草慶子
末枯や掘り出し人形まつ白し 龍胆 長谷川かな女
末黒野来て人形の面無表情 中村明子
松ちりて人形浮くや須磨の海 松瀬青々
松過ぎの提灯増やす人形屋 佐藤文子
根釣より戻り人形美しく 岸本尚毅 舜
桃にともせよ歳々の人形をやらん 内田百間
桃の灯に今年の人形を加へたり 内田百間
桐咲いて人形の町眠くなる 秋葉暁江
桶揺つて水賑かや浮人形 大橋櫻坡子 雨月
梅咲いてケースの中のお人形 川崎展宏
梅雨寒の竹人形の袖たもと 井沢正江 湖の伝説以後
梨咲くや警官人形田へ転がる 田川飛旅子 『山法師』
椎の花つづらの中の指人形 二村典子
極月の竹人形に竹の釘 星野沙一

musha ningyoo
武者人形もののふの血のなお流れ 宇咲冬男
武者人形人居ぬ方を睨みゐる 除田兎城
武者人形兜の紐の花結び 高橋淡路女 梶の葉
武者人形楠は葉叢を盛り上げて 池上樵人
武者人形法躰にして馬上かな 大橋越央子「野梅」
武者人形絵巻の山も川も晴 櫛原希伊子
武者人形飾りし床の大きさよ 稲畑汀子
武者人形飾る仏間を明け渡し 岡本昌三
武者人形飾る座敷の舞稽古 近藤いぬゐ

死人梅雨人形の寺なまぐさし 矢島渚男 延年
残る世の人形揉めば泣きにけり 攝津幸彦 鹿々集
残る虻人形を刺し続けゐる 小泉八重子
毛皮著て人形焼を並び買ふ 今井千鶴子

水すこし腹に残れり浮人形 辻桃子 ねむ
水仙の震へを唇に竹人形 吉田紫乃
水底にまがり立ちをり浮人形 星野立子「立子句集」
水面にぶつかり浮む浮人形 星野立子
永き日の木偶舌出して見せにけり(人形師大江巳之助居) 細川加賀 『玉虫』
汗ばむや泥人形の楊貴妃も 大島民郎

江戸ッ子の九代目継がず浮人形 福島勲
江戸人形買ふ楽しみも菊供養 越桐三枝子
法師蝉十指休めぬ人形師 樋渡瓦風
法師蝉撥条人形捻子巻けば 吉野義子
泣き人形交々叩き年忘れ 川村紫陽
泣顔の人形よ鮎落ちはじむ 吉本伊智朗

jooruji ningyoo
浄瑠璃人形玉葱畑の波に 中村ヨシオ

uki ningyoo 浮(き)人形
浅草の人形焼も冬はじめ 宮坂静生 春の鹿
浮き人形浮くばかりなり齢をとる 小島千架子
浮人形ある日はひとの言ひなりに 鈴木栄子
浮人形なに物の怪の憑くらむか 角川源義『西行の日』以後
浮人形に雨強く来し盥かな 富安風生
浮人形もちて泊りにゆきにけり 稲荷島人「続夏雲」
浮人形侍らせて子の口達者 藤原かつ代
浮人形動かずなりぬ桶のふち 田中紫紅
浮人形売って男の暮らしかな 小林たか子
浮人形思はぬ方に浮かびけり 川村紫陽
浮人形欲しや浮蝋燭のあり 後藤比奈夫 めんない千鳥
浮人形母が知らざる一事あり 鈴木栄子
浮人形水飲みすぎて泡吐けり 棚山波朗「料峭」
浮人形沈めて近江言葉かな 関戸靖子
浮人形浮人形の腹の上 加藤静夫
浮人形畳に置けばさみしけれ 大橋櫻坡子 雨月
浮人形真夜のしじまに立上る 加賀美子麓
浮人形腹をかへして揺れ合へる 吉武月二郎「ホ誌雑詠選集」
浮人形莫迦々々しくて買ひにけり 星野麦丘人
浮人形見てゐて妻とはぐれけり 永澤 謙

浮島にみごとな松や雛人形 梶山千鶴子
浮玉といひて浮人形の類 後藤比奈夫 めんない千鳥

海を背の人形蔵や冬菜吊る 藤木倶子
涼しさや竹人形の竹の髪 池園二三江
淡路人形泣くを観し日の鳴戸渦 石原八束 風信帖
湯ざめして竹人形のうすみどり 御旅屋長一
満月の戸口が濡れてる お人形 松本恭子 二つのレモン 以後
火の恋の人形遣ふ秋しぐれ 吉田汀史
炉火に照りつぐこれ百年の煤人形 加藤知世子 花寂び
炎昼のすらりと越前竹人形 つじ加代子
無花果や人形の声あぐるまで 増田まさみ
煤逃げやふと人形の笑みに会ふ 金子 潤
熊手買ひたるは人形劇一座 市川千晶
片腕が残り人形供養果つ 藤岡筑邨
田を半ば起しひと日の人形座 伊藤いと子
皇孫誕生人形焼のよく売れて 角川 照子
盥より出され砂場の浮人形 榎田きよ子
目の奥へ人形のひく雪解光 山本一糸
眉もたぬ公卿人形の深雪晴 源鬼彦
眼白飼ふや父が集めし棚人形 月舟俳句集 原月舟

kise ningyoo
着せてなほ手なし人形や雨の虫 臼田亞浪 定本亜浪句集
着せ替え人形津軽の花は白い花 磯貝碧蹄館

石女(うまずめ)や人形作る千団子 キち 俳諧撰集玉藻集

秋の夜のからくりの頸鳴れりけり(八女の燈籠人形) 岸田稚魚 『花盗人』
秋の夜の博多人形賑やかに 松村蒼石 寒鶯抄
秋の夜や人形泣かす一つ宛 木歩句集 富田木歩
秋の燈の白さ人形つくりをり 臼田亞浪 定本亜浪句集
秋まつり子消し人形川に捨て 寺山修司 花粉航海
秋燕や目尻きりりと飛騨人形 木田千女
秋草に泣き人形を泣かせけり 雑草 長谷川零餘子
秋蝶や人形振りの雀右衛門 尾崎迷堂 孤輪
秋風のなか人形をならべたる 中田剛 珠樹
秋風や骨の白さの竹人形 鷹羽狩行

稲架もみちのく人形に豊作貧乏 橋本夢道 無類の妻
立春や傀儡人形愁嘆場 辻桃子

take ningyoo bamboo dolls
竹人形いづれ涼しき立ち姿 湯沢あや子(屋根)
竹人形ひとり言さへ涼しくて 渡辺恭子
竹人形並んで水田見てゐたり 原田喬
竹人形前かがむほど春の雪 松山足羽
竹人形竹に還れぬままに梅雨 井沢正江 湖の伝説以後
竹人形裾をほそめて星月夜 長谷川かな女 花寂び
竹人形見て身の芯の梅雨いきれ 田口風子
竹人形買ふや天意の雪すこし 鍵和田[ゆう]子 浮標
竹伐て表につむや人形店 妻木 松瀬青々

笠の菊揺れて歎ける人形かな 大橋櫻坡子 雨月
筋太き人形の髪花冷えに 香西照雄 対話
糸瓜咲き湖畔人形遣ひ病む 宮武寒々 朱卓
紀元二千六百五十五年の御人形 攝津幸彦 鹿々集
紅梅をそのまま借りし人形劇 中戸川朝人 残心
編みあげし人形のやうな鶏頭かな 大木あまり 火球
編初の毛糸人形みどり児に 山口恵子
置替へる盥の浪や浮人形 増田龍雨 龍雨句集
耳のない人形のよう蚊帳を吊る 伊東裕起
胡桃割るとき人形に魂入りぬ 山田弘子 螢川
胡粉兀し人形や土の肌寒み 肌寒 正岡子規
腹押せば人形の哭く星月夜 佐川広治
膝つ子の人形屑にぬくもる雪催ひ 木歩句集 富田木歩
臥竜梅からくり人形展開図 高本紅女
花冷や竹人形につのかくし 西村博子
花更けてさて人形と人形師 星野石雀
若餅やべべ著せ替へる児人形 鶴老
荷風忌の脚を揃へし捨人形 関口祥子
菓子盆にけし人形や桃の花 其角
菖蒲人形つきさしてある畳かな 春日部春二
蒲団干すぽとりと落ちし抱人形 砂田千代
蓬が杣和泉が軒の人形なり 幽山 選集「板東太郎」
薫風や古りて艶増す竹人形 大塩千代
藁にさす人形の首秋ふかし 福田甲子雄
藁人形宙に投げ上ぐ養花天 柏木豊太
虎落笛木偶人形の口開いて 山本やす子
蚊を焼くや箪笥の上の寝ぬ人形 月舟俳句集 原月舟
螺子巻いて水を得たるや浮人形 窪田日草男
行く春の人形振の足はこび 渡辺昭
街驟雨人形の眼の氾濫す 対馬康子 愛国
西の木に人形のぼる花ものぼる 阿部完市 にもつは絵馬
買初の人形焼の温みかな 土屋秀穂
赤ん坊武者人形の間に眠る 滝沢伊代次
身に余る人形抱きて初写真 龍神悠紀子
軒氷柱寝べきところにお人形 田中裕明 櫻姫譚
逗留や五月人形飾らるゝ 池内たけし(京、王城居に在り)
這ふ児餅由緒床しき人形会 村田芙美子
遠野火や稽古人形魂抜けて 桂樟蹊子
野分しておいで祭の人形寂ぶ 西村公鳳
金魚澄みフランス人形裾ひろげ 本居桃花
鈴虫を壺に鳴かせて人形師 杉森干柿
長き夜を押せばへこめる護謨人形 辻桃子
門に来てねぶた人形こちむけし 高木晴子 晴居
除雪車にさらわれし人形のこと 対馬康子 愛国
陰ふかき人形つかひの皃も行く 吉岡禅寺洞
陽気なる人形劇やマルメロや 二村典子
雁行や仰ぐ操り人形も 平井照敏 天上大風
雁首を回し切れない木偶人形 関根瞬泡

雛の日の追ひかけて来る人形寺 上野和子
雛人形の真顔に混じり午前過ぐ 森田智子
雛人形エレベーターより抱かれて 住素蛾
雛菓子に足投げ出せる人形たち 杉田久女

雪の夜の薄絹人形首をまげ 古沢太穂 古沢太穂句集
雪代や竹人形の胸うすき 鶴田俊子
雪降るや竹人形に竹の笛 伊藤 敬子
霞草紙人形も二重帯 花谷和子
青い目の人形も供養花の寺 山本英子
面長を東風に磨かれ竹人形 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
風呂嫌ひ幾つも持ちて浮人形 斉藤たま江
飛雪どつと厄人形の目鼻消す 佐々木とく子 『土恋』
髢草結ひて人形つくれる子 滝沢伊代次
鬘屋の目無し人形街二月 小川澤子
鬼灯に千代紙きせて人形哉 寺田寅彦
魔女人形吊らるテラスに夏の月 津野美都江 『ひなげし』
黄落や人形は瞳を開けて寝る 堀井春一郎
黒衣冷え吾に似て短躯阿茶人形 千賀静子 『種壷』

●紙人形 kami ningyoo paper dolls
おぼろ夜や乳房をもたぬ紙人形 沢田紅柳
冬の河沈黙のあとの紙人形 保坂敏子
十五夜の紙人形は寒からむ 田上公代
早稲の香や越中おわら紙人形 舘岡沙緻
梅ひらき紙人形の息さそふ 川崎慶子
紙に戻るとき紙人形の丸はだか 斉藤姫与志
紙人形位置定まりて緑の夜 村越化石
雪降るや紙人形の紙の呼吸 滝井清子
霰ふる目鼻うすれし紙人形 穴井太 土語

●ぬいぐるみ nuigurimi stuffed dolls
短日のぬいぐるみ置く心臓外科 高澤良一 随笑
花餅や未熟児室に縫ひぐるみ 足立幸子
赤札を耳に師走の縫ひぐるみ 大町 道
春愁大人も抱きて縫ひぐるみ 毛塚静枝

●泥人形 doro ningyoo mud dolls
汗ばむや泥人形の楊貴妃も 大島民郎

●土人形 tsuchi ningyoo clay dolls
すかんぽや膝にくだけし土人形 柿本多映
土人形に似ている子供夏祭 奥中晩暉
土人形怺へし目もて冴え返る 浅見玲子
庭に干す土人形や石蕗の花 石蕗の花 正岡子規
津屋崎の土人形や桃の弓 穴井太 原郷樹林
海峡や土人形のわたりくる 宮石火呂次
秋の日の生干に寒し土人形 尾崎紅葉

秋立つや店にころびし土人形
Takakuwa Rankoo 高桑闌更 Takakuwa Ranko (1726-1798)
. aki tatsu ya mise ni korobishi tsuchi ningyoo .


色はげし土人形の肌寒し 肌寒 正岡子規
虫啼くや汝も聴きすむ土人形 碧雲居句集 大谷碧雲居


●竹人形 take ningyoo dolls from bamboo
佐渡恋の竹人形や春を待つ 古島恒子
刃物研ぐ竹人形師雪の香に 田中英子 『浪花津』
吊されて竹人形の夏やつれ 辰野利彦
底冷の竹人形の展示室 高木晴子
新涼の髷透き彫りに竹人形 長谷川かな女 花寂び
春は春の言葉を刻み竹人形 殿村菟絲子 『菟絲』
春愁や竹人形の胸たひら 日阪昌子
春陰や竹人形の指四本 田口風子
梅雨寒の竹人形の袖たもと 井沢正江 湖の伝説以後
極月の竹人形に竹の釘 星野沙一
水仙の震へを唇に竹人形 吉田紫乃
涼しさや竹人形の竹の髪 池園二三江
湯ざめして竹人形のうすみどり 御旅屋長一
炎昼のすらりと越前竹人形 つじ加代子
秋風や骨の白さの竹人形 鷹羽狩行

竹人形いづれ涼しき立ち姿 湯沢あや子(屋根)
竹人形ひとり言さへ涼しくて 渡辺恭子
竹人形並んで水田見てゐたり 原田喬
竹人形前かがむほど春の雪 松山足羽
竹人形竹に還れぬままに梅雨 井沢正江 湖の伝説以後
竹人形裾をほそめて星月夜 長谷川かな女 花寂び
竹人形見て身の芯の梅雨いきれ 田口風子
竹人形買ふや天意の雪すこし 鍵和田[ゆう]子 浮標

花冷や竹人形につのかくし 西村博子
薫風や古りて艶増す竹人形 大塩千代
雪代や竹人形の胸うすき 鶴田俊子
雪降るや竹人形に竹の笛 伊藤 敬子
面長を東風に磨かれ竹人形 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』

●マスコット人形
●繰り人形


●土偶 dogu
お藷蒸す土偶体形疎んずも 高澤良一 寒暑
この秋も会いに無名の土偶の眼 対馬康子 吾亦紅
ひなげしや土偶の乳房に指の跡 大木あまり 火球
みな古き世の色まとふしぐれ土偶 吉野義子
みひらきて秋の翳濃き土偶の目 平井伊都子
五千年も妊みて土偶緑さす 北川英子
人類の旬の土偶のおっぱいよ 池田澄子 たましいの話
優曇華や土偶の顔は皆笑ひ 宮坂静生 青胡桃
凍土もて間牒土偶の鼻こねり 石塚友二 光塵
向日葵は灼けて土偶のおほらかさ 高澤良一 素抱
囀や土偶に逞しき乳房 染谷佳之子
土偶には土偶の使命草の花 梅本幸子
土偶の雛目鼻もわかず笑み給ふ 加倉井秋を
土偶みな掌に乗り土用東風 廣瀬直人「朝の川」
土偶見し眼にたたなはる雲の峯 高澤良一 素抱
山笑ふ土偶のやうに妊婦われ 仙田洋子
日鼻凍む土偶になせり愛しくてか 宮津昭彦
星流れ土偶の眼より波の音 菅野茂甚
春みぞれ土偶は四肢を張りづめに 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
春寒く土偶のごとき欠伸して 行方克己 知音
月の出や女体土偶の身籠れる 辻美奈子
根城址にゆかりの土偶秋時雨 苫米地古北
涼しさの火より生れし土偶かな 小池きく江
父に似て母に似て土偶夏痩せぬ 宮坂静生 青胡桃
爽籟や土偶どれにも臍の穴 有馬朗人 知命
秋風に飛出て安き土偶の臍 野澤節子 遠い橋
縄文のみみづく土偶の口寒き 石原八束 『仮幻』以後
縄文土偶の乳房小さし春浅し 近藤一郎
胎の子に手を置く土偶あたたかし 林 ゐづ子
腿太き土偶に割れ目豊の秋 矢島渚男 延年
花冷えや火に洗はれし土偶の肌 野澤節子 遠い橋
芽立ち時土偶のかけらじゃがいもも 尾田秀三郎
菜の花や孕み土偶の深眠り 大森和子
蝉しぐれおーいと縄文土偶の子 岡崎万寿
遮光器土偶がふつと初笑 大森知子
闇のほか土偶は知らず母子草 柴田三津雄
青北風や土偶三千年の黙 矢野忠男

●指人形 yubi ningyoo finger dolls
ぼろ市の風があやつる指人形 有馬籌子
椎の花つづらの中の指人形 二村典子
手袋の指人形で遊びし日 杉山良子

●木偶 deku wooden dolls
からくりの木偶動きさう新樹光 梶田ふじ子
からくりの木偶翻る花の山 加藤耕子
こぼれ灯の年守る灯かも木偶館 石原 義輝
そら泣きの木偶の衣擦れ雁来紅 上窪則子
たましひの抜けたる木偶となりにけり 角川春樹
ひんここ祭木偶の農衣の草木染 近藤一鴻
やませ風吹けば目つむる木偶の首 石原君代
ユリの木の皆落葉して木偶の坊 高澤良一 燕音
一息に魂を入れ木偶廻し 有馬朗人
二ン月や木偶師の五指の爪つぶれ 高井北杜
五月雨や息交すかに木偶並び 植田 桂子
倉一つ残れる木偶座近松忌 森岡花雷
冬のバラ木偶のお弓は紅ふふみ 高井北杜
冷まじや虫に食はれし木偶の首 落合ひろ恵
初泣は木偶の巡礼歌の段 尾形柿園
動かざる木偶怖ろしや黴の香も 手島 靖一
古木偶のざんばら髪や藍の花 吉田汀史
古木偶のまなこの寂とひるざくら 吉田汀史
吊られある木偶も秋意の息を吐く 名越奈緒
哭く木偶に婆のつれ泣き村芝居 岡部六弥太
壁に吊る木偶の手足や冬薔薇 太平栄子
子供等に腰やゝかゞめ木偶廻し 高橋淡路女 梶の葉
安乗木偶月に貌上げ泣きにけり 西山満寿
安乗木偶無月の闇のむしろ席 桜井勝子
安乗海女待宵を来て木偶に泣く 佐野美智
寒四郎目玉の動く木偶吊られ 後藤綾子
小屋入りや田植了へ来し木偶つかひ 小澤満佐子
工房の木偶おろおろと花の塵 古舘曹人 樹下石上
彼岸寒真綿にくるむ木偶頭 後藤春子
抱きあげし木偶ひと泣かせして曝す 水谷岩雄(年輪)
日もめっきり春めき並木の木偶ノ坊 高澤良一 素抱
春宵や木偶が眉上げもの申す 那須 淳男
春惜しむ頭の大き阿波の木偶 小島美恵子
春送る膝なき木偶の膝がしら 斎藤 梅子
春雷に眼くらりと娘木偶 井口弥江子
昼顔や木偶にはらわたなかりける 斎藤梅子
望の夜の波音に舞ふ安乗木偶 山下千代子
望更けぬ灯を納めたる木偶芝居 澤田 緑生
木の葉髪生涯木偶の足使ふ 稲荷島人

木偶えらぶ軒や梅咲く木曾路口 桂 樟蹊子
木偶にいま魂入りて初芝居 品川鈴子
木偶のごと夏掛まとひ眠りけり 池上澄子
木偶の抜く段平涼し文弥節 高澤良一 ももすずめ
木偶の目の夜は金色に木枯吹く 桂信子
木偶の眉愚かに太し小鳥引く 鈴木節子
木偶の眼のかたりとねむる寒夜かな 郡司正勝
木偶の瞳と向き合ひ居れば秋の声 大和田享子
木偶人形吊らる深秋楽屋裏 谷中隆子
木偶倉に木偶の目を剥く日雷 平賀扶人「風知草」
木偶始かんざし抜けるまで泣けり 山口誓子 一隅
木偶宿の踏み減る框寒の木瓜 加藤耕子
木偶抱いて出を待つ黒子十八夜 櫻井幹郎
木偶生きて寒の舞台をうち鳴らす 辻桃子
木偶芝居抜けて岬へ月見人 安江緑翠 『枯野の家』
木偶鴨に鴫か千鳥か鳴いてゐる 木村蕪城 寒泉
木偶鴨の畦にならびし佛生会 関戸靖子
木偶鴨の眼のかなしくて雪降れり 関戸靖子
木偶鴨の眼ひらきしまま流れ寄る 関戸靖子
木偶鴨を積み枯菰へ投げ碇 木村蕪城 寒泉

梟や竹の木偶泣く裏に啼く 吉田紫乃
殺されし木偶が寝てゐる秋の昼 吉田汀史
永き日の木偶舌出して見せにけり(人形師大江巳之助居) 細川加賀 『玉虫』
油まじ安乗木偶倉閉ざしをり 美野節子
海苔掻女夜は文弥の木偶使ふ 数馬あさじ
濃あぢさゐ巡礼木偶の腕で泣く 谷中隆子
白山の雪が舞ひくる木偶廻し 古賀まり子
短夜の木偶ははたりとまぶた閉づ 青木洋子(けごん)
秋風裡子等の操る木偶が泣く 山本孝子
綿入のそれも金襴安乗木偶 斎藤夏風
罌粟の昼木偶はまなぶた落しけり 斎藤 梅子
義太夫に木偶を泣かせて女正月 那須淳男
芽柳や三春の里の木偶張子 天野英子
蒸せる夜の血走る眼してお弓木偶 高井北杜
虎落笛木偶人形の口開いて 山本やす子
虫干の木偶たはむれに泣かせけり 西村 梛子
行く春の阿波にかかれる木偶芝居 尾形 柿園
裸灯寒し抱けば瞑るおつる木偶 斎藤千代子 『朱盃』
農夫の手木偶にやさしや蝶の昼 成瀬櫻桃子 素心
近松忌重い遊女の木偶頭 浜垣和子
遠くなるものに古佐渡の木偶廻し 北島翠山
遠雷や木偶のからくり竹と紐 那須淳男
鈴懸の花などしらぬ木偶の耳 宮崎重作

阿波に来て木偶と踊れり年の暮 後藤春子
阿波木偶の眉はね春を惜しむかな 後藤軒太郎
阿波木偶の錦繍纏ふ菊日和 堀北久子

雁首を回し切れない木偶人形 関根瞬泡
青嵐吊るされ木偶の踊り出す 小原樗才
頭師の秋日の膝の木偶入魂 文挟夫佐恵 雨 月
顔見世や口上木偶の咳ばらひ 水原秋櫻子
風花やかのこの朽ちし娘木偶 各村英子
飛騨に春からくり木偶の宙返り 服部一放
首垂れて春待つ木偶の並びたり 柏 禎
駘蕩や木偶の坊にはまだ遠し 平吹史子
髪ふりみださせ木偶を手先に傀儡師 中村草田男
鬼木偶の寄り目にとほき桃霞 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
魂抜けし木偶の吊らるる後の月 山下千代子
魂抜けし木偶相寄りて梅雨の壁 大東 晶子
魂抜けの木偶の垂れゐる秋暑かな 牧川昌子
鳥雲に腕あげて木偶哭きにけり 大串章 朝の舟


●傀儡 kairai puppets
あふむきて傀儡笑へば傀儡師も 成瀬正とし
あやまりて鬼を出しけり傀儡師 福田井村
いのち得て恋に死にゆく傀儡かな 眞鍋呉夫
かつたりと泣く目を閉ぢし傀儡かな 名見崎新
かつ~と眉毛怒れる傀儡かな 徳永山冬子
きさらぎの使はぬ部屋に傀儡かな 大木あまり 火球
この村の旧家に泊る傀儡師 井上綾子
これの世に影たまはれる傀儡かな 眞鍋呉夫
さすらひの老が夫婦や傀儡師 吉田冬葉
しもた屋をすぐに出て来し傀儡師 森田峠 避暑散歩
たてかけし傀儡の姫も影をもつ 丹羽登代
はじめより愁ひ顔なる傀儡かな 井沢正江 湖の伝説
まばたきて人を戀せる傀儡かな 加藤三七子
みちのくの傀儡師といひ飛弾に逢ふ 桑田青虎
みな見せて寂しうなりぬ傀儡師 藤太郎
世の中は箱に入れたり傀儡師 芥川龍之介
亀鳴くや阿波に巳之助傀儡小屋 古舘曹人 樹下石上
人形まだ生きて動かず傀儡師 高浜虚子

傀儡にも座設けしたり近松忌 水原秋桜子
傀儡にも母ありて年惜しみけり 有馬朗人 天為
傀儡に掻い口説かれて見てゐたり 後藤夜半 翠黛
傀儡のくづれて眠る大暑かな 佐藤美恵子
傀儡のこときれたるは糸放す 長谷川双魚 『ひとつとや』
傀儡のざんばら髪のみどりかな 八田木枯
傀儡の上げたる鈴の鳴りにけり 中森皎月
傀儡の厨子王安寿ものがたり 後藤夜半 翠黛
傀儡の宙を駆けゆく恋路かな 橋本鶏二
傀儡の日出度日出度と舌を出す 橋本鶏二
傀儡の歎き伏したる畳かな 橋本鶏二 年輪
傀儡の頭がくりと一休み 阿波野青畝
傀儡の首の折れたる後向き 三浦まさゑ
傀儡や船賃まかす尼が崎 野坡
傀儡われ箱に納まるごとく臥す 渡辺鳴水
傀儡をつかへる影も夕かげり 後藤夜半 翠黛
傀儡女やとなりの門へ先廻り 小田道知
傀儡姫凍てて吊らるる楽屋裏 石原八束 『秋風琴』

傀儡師しの田の森に入りにけり 梅室
傀儡師に冬の芒の打ちなびき 石田由美枝
傀儡師に慰められて泣く子供 飯田はるみ
傀儡師の小指の無きを見てしまふ 齋藤朗笛
傀儡師ぽつくり寺の多き村 杉本寛
傀儡師ものの怪抱いて小屋に入る 小林一鳥
傀儡師串本節の町をゆく 森田峠 避暑散歩
傀儡師仏出さうか鬼出そか 平川翠扇
傀儡師他郷に命古りにけり 斎藤朗笛
傀儡師宿はと聞けば丹波哉 傀儡師 正岡子規
傀儡師日暮れて帰る羅生門 藤野古白
傀儡師来ねば死んだと思ひけり 夏井いつき
傀儡師梅の花道歩み來る 傀儡師 正岡子規
傀儡師波の淡路の訛かな 永田青嵐
傀儡師消え戦争が始まつた 吉田汀史
傀儡師潮に濡れたるものを履き 高階和音
傀儡師片手使ひの十二分 村中美代
傀儡師阿波の鳴門を小歌かな 其角
傀儡師鬼も出さずに去ににけり 村上鬼城
傀儡師鰤大漁の町に入る 森田峠

其箱のうちのぞかせよ傀儡師 傀儡師 正岡子規
初刷に出たりな古き傀儡師 尾崎紅葉
勝鬨橋開いて船の傀儡師 鈴木有紗
名所の松めで居れば傀儡師 露月句集 石井露月
女多き聚楽御所や傀儡師 四明句集 中川四明
女手にあまる傀儡を操りぬ 深野まり子
妻隠にあづまをくだる傀儡師 西島麦南 人音
市の塵傀儡の髪にかゝりけり 西島麦南 人音
御忌詣傀儡の笛に耳ふさぎ 星野石雀
手鏡に歩き出したる傀儡師 宮崎重作
投じたる扇を拾ふ傀儡の手 富安風生
日に見ゆる襟のよごれや傀儡師 室積波那女
梅の咲く背戸へはいるや傀儡師 傀儡師 正岡子規
櫛匣を膝に傀儡の髪手入 伊藤紀秋
正月の物あはれなり傀儡師 正月 正岡子規
母と見し傀儡の欷歔の声いまも 橋本鶏二
泣きしづむうなじつめたき傀儡かな 西島麦南 人音
浜に舞ふ安乗傀儡の初烏帽子 刀根幹太
猿曳も猿も見とれて傀儡師 猿曳 正岡子規
玉の緒のがくりと絶ゆる傀儡かな 西島麦南(1895-1979)
生も死も口三味線の傀儡師 辻 のぶ子
白露や傀儡女の名は初声と 辻桃子
着膨れて夫の傀儡にもなれず 田淵ひで 『木椅子』
睦月から泣いて見せけり傀儡師 傀儡師 正岡子規
立春や傀儡人形愁嘆場 辻桃子
節に成る古き訛や傀儡師 炭 太祇 太祇句選
紐重く肩にかけたり傀儡師 室積波那女
紫の上もめしけん傀儡師 蓼太
絢爛と傀儡の凍てる楽屋裏 石原八束
緑陰のそれは傀儡を入れし箱 正木ゆう子 静かな水
老らくのつたなき傀儡ものがたり 五十崎古郷句集
良夜とて傀儡師の妻呵と笑ふ 小原洋一
蝶鳥につけまはされて傀儡師 玄蛙
辨慶に吠つく犬や傀儡師 傀儡師 正岡子規
阿波路晴れ傀儡一笛添へにけり 宇野犂子
雨がふる浄瑠璃坂の傀儡師 夏目漱石 明治二十九年
髪ふりみださせ木偶を手先に傀儡師 中村草田男
鳥追を追ふ子戻りぬ傀儡師 安井小洒
鶏頭を抜けば傀儡の重さあり 大串章 百鳥
くぐつ劇はじまる一握の芒おき 柴田白葉女 『夕浪』
くぐつ女の細眉青き在祭 高柳柿花
山氷りくぐつの顔に薄埃 宇佐美魚目 天地存問
持統街道くぐつの道と伝へたる 後藤綾子
泣き伏して身のかさもなきくぐつかな 安田千鶴女


●マリオネット marionetto
うなだれしマリオネットに薔薇を刺す 仙田洋子 雲は王冠
ポポの花マリオネットの胸の糸 金子皆子
炎天をマリオネットのごと歩し来 高澤良一 随笑
茴香やマリオネツトの取れば鳴る 小池文子「巴里蕭條」


●福助 Fukusuke
お下がりの福助足袋を呼びつける 仁平勝 東京物語
ちちを埋めはは埋め乾く福助足袋 穴井太 天籟雑唱
炎帝にお辞儀せしまま福助は 佐々木六戈 百韻反故 初學
福助に作れる菊に人だかり 高澤良一 ももすずめ
福助のお辞儀は永遠に雪がふる 鳥居真里子
福助の太るにまかす夜長かな 二村典子
福助の牛若丸や二枚半 蘇山人俳句集 羅蘇山人
福助の鉢より大き花掲げ 高澤良一 燕音
福助の面起こせる冬はじめ 高澤良一 ぱらりとせ
福助の頭にをるや冬の蝿 大木あまり 火球
福助の頭は空つぽや十二月 小泉八重子
福助は海棠の花の男かな 海棠 正岡子規
空襲展煤け福助畏まり 森洋


●キューピー kyuupii Kewpie
キューピーの翼小さしみなみかぜ 高柳克弘
キューピーといふ名の先生卒業期 高澤良一 随笑
水切りてキューピーの頭の赤蕪 高澤良一 ぱらりとせ
秋風や射的屋で撃つキューピッド 大木あまり 雲の塔


●張り子 hariko papermachee dolls
うかうかと張子のとらに初日哉 会津八一
ちとやすめ張子の虎も春の雨 夏目漱石 明治二十八年
嬰児昼寝絵馬の金時犬張子 福田蓼汀 秋風挽歌
山車にのる河童張子に夜霧ふる 八牧美喜子
張子なる越ヶ谷雛のあはれかな 野村喜舟
張子の御影女わらべや御忌に逢ふ 昌夏 選集「板東太郎」
張子の虎に穴あいてゐる土用入 大石雄鬼
担ぎゆく張子の大蛇虫送り 高萩弘道
日陰りて張子天狗の凍みつ鼻 高澤良一 さざなみやつこ
春愁や張子の虎の頭を小突く 出水月舟
歳晩や張子の牛を吊す辺に 阿部みどり女
犬張子くづれて出たり煤拂 煤払 正岡子規
犬張子ちかづけたまひ御雛 後藤夜半
犬張子に雛あられ添へ娘へ贈る 安野良子 『篝火草』
犬張子買へばしぐるる谷中かな 角谷昌子
白牡丹張子のやうな岩一つ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
笊かむる張子の犬に夕野分 角川 照子
紅煙吐く張子の大蛇鐘供養 小路日照
芽柳や三春の里の木偶張子 天野英子
雪の朝日張子の牛馬魂抜けて 林翔 和紙
鬼が突く張子鉄棒節分会 堀 勇



●京人形 Kyoo ningyoo dolls from Kyoto
きさらぎの京人形のひと引き目 豊田都峰
きゆつきゆつと汚れゆくなり京人形 攝津幸彦
京人形鉄漿つけあはれ吉野の忌 荒木法子
山姫やすゝきの中の京人形 泉鏡花
行く春やどこへもゆかぬ京人形 渡辺恭子
行春やうしろ向けても京人形 渡邊水巴

source
http://yoshi5.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/HAIKUreikuDB/ZOU/SHAKAIseikatu/740.htm


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. Regional Folk Toys from Japan .


. Tohoku after the BIG earthquake March 11, 2011

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